視覚支援はITの時代
日本障害者歯科学会 顧問 緒方克也先生 (社会福祉法人 JOY明日への息吹 理事長)
障害者が歯科医療を受ける時、絵カード等の視覚支援を用いられてから久しいが、ここ数年はいくつかの形でデジタル機器が導入されてきた。障害者とITは時代の先端というよりももはや日常的といわれる時代である。その証拠にかなり重度の障害児たちが、あちこちでデジタル端末を操作し、楽しんでいる姿を見ることができる。もちろん支援学校でもこれを積極的に取り入れ、教育や余暇の中で浸透している。それであれば、「はっするでんたー」なる視覚支援のIT化は当然であり、治療のための視覚支援のみならず歯科保健の支援グッズとしても有意義である。学術的研究でその有意義さを証明するのもいいが、研究よりずっと前に臨床の現場で有用性が広がろうとしている現実は見逃せない。
歯科医療支援のデジタル端末である「はっするでんたー」は障害者の最善の利益として、必然性の高いものになっていくと思う。使われることによってプログラムはますます充実することを思うと、さらに進化した「はっするでんたー」の開発を障害者とともに期待したい。
頼りになる歯科のツアーガイドさん
岡山大学歯学部附属病院 スペシャルニーズ歯科センター 教授 江草正彦 先生
歯科治療は患者さんにとっては最もストレスの多い医療の一つである。初めての経験が苦手な人にとっては、できればガイドさん付きのツアー旅のようにスケジュールによる見通しがわかれば不安も軽減される。幼児から学童になって大きく成長できるのは、学校での時間割にそって学習する生活習慣があるからでもあろう。こんな旅のスケジュールや授業の時間割の役目をしてくれるのが、歯科治療における「はっするでんたー」です。
絵・写真・映像・音により患者さんにわかりやすいように診療のスケジュールを作成できるタブレット型のデジタル機器である。歯科治療の順番と見通しがわかることで、一つ一つのステップのゴールへの達成感を得られることができ、自己肯定感を育むことが期待できる。私がノースカロライナ大学医学部の自閉症センターで研修した当時も発達障がいの子供たちは好んでコンピューターを使用していた。「はっするでんたー」は障害者歯科の現場に限らず、歯科治療の苦手な人にとっては頼りになる歯科のツアーガイドさんとなるであろう。
その他の監修者の先生たち
大阪大学歯学部附属病院
障害者歯科治療部
准教授 村上 旬平先生
千葉県立佐原病院 歯学博士
自閉症スペクトラム支援士
伊藤 政之先生
リハビリ発達支援ルーム かもん
専門作業療法士
鴨下 賢一先生
長崎大学医学部 保健学科 作業療法学専攻
教授 岩永 竜一郎先生
米国コミュニケーションセラピスト
カニングハム 久子先生